大陸に赴任した軍人の中には、職業画家や絵を趣味にした人が少なくありません。
本展では、4人の軍人の絵を紹介します。武藤夜舟は幼いころから川端玉章の下で日本画を学んでいました。陸軍士官学校を卒業し将校として出征しましたが、1931(昭和6)年、陸軍省の依頼で満州事変の記録画を残し、その後は多くの軍事郵便絵葉書の原画を描きました。退役後は日本画家として活躍します。
今村嘉吉も武藤と同様に陸軍士官学校を出て将校として大陸に渡りました。1931年には陸軍省の会議室で50点の戦争画の個展を開いています。洋画を学んでいたため、陸軍省のポスターや軍事郵便絵葉書の原画を描きます。
近藤啓二は東京美術学校(現・東京藝術大学)を卒業し、カトリック美術協会を創立するなど画家として活動していましたが、37歳で召集され中国に渡ります。13か月の軍隊生活の内、8か月を病院で過ごし、傷病兵を引率して復員しました。南中国での軍隊生活や風物をスケッチ風に描いています。
土肥慎太郎は陸軍幹部候補生の教育を受けたのち、26歳から3年間の軍隊経験をします。土肥は俳句を趣味としており、大阪の自宅宛の軍事郵便葉書には俳句と共に関連した絵が描かれています。32歳の時に2度目の召集があり、ビルマ(現・ミャンマー)方面に渡りました。終戦後に捕虜となり、トングーの収容所に入ります。ここでは仲間と俳句集を作り、スケッチ帖には、植物やビルマの風物が多く描かれています。
4人とも全く異なったスタイルの絵ですが、戦争の緊迫感や生々しさはなく、大陸の大らかな風景や異国の風物に関心を寄せていたことが分かります。軍隊生活の合間に描かれた、各人の個性的な眼差しをお楽しみください。

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日 時2023年2月8日(水)~14日(火)
9:00~17:00
会 場九段生涯学習館 2階 九段ギャラリー
東京都千代田区九段南1-5-10
入場料無料
後 援千代田区
協 力昭和館、しょうけい館
※ご来場の際は、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策にご協力をお願いいたします。状況により入場制限を行う場合や開催中止あるいは期間変更となる場合があります。

■■昭和館・しょうけい館との連携企画■■
九段生涯学習会館に近接している昭和館、しょうけい館では、この特別展示と連携した企画を実施します。

昭和館
ニュースシアターで大陸の様子を伝えるニュース映画を上映するほか、図書室では関連書籍の紹介コーナーを設置します。
※2月13日(月)休館
●昭和館の情報はこちら

しょうけい館
中国戦線で戦傷病者となった方の証言映像を上映するほか、証言者の関連資料を展示します。また、図書閲覧室で関連書籍を紹介します。
※2月13日(月)休館
●しょうけい館の情報はこちら
武藤夜舟《皇軍歓迎》
近藤啓二《饅頭を買う》
今村嘉吉《砲兵隊》
土肥慎太郎《印度女》

平和祈念展示資料館 (総務省委託)